文房具は私たちが子供のころは勉強や遊びに、学校に入れば否応なく使用し、社会に出れば仕事に、家庭では趣味の世界へと、限りない知と文化の世界へ導いてくれるナビゲーターです。その文具を作り、届け、販売する業界を文具業界と呼びます。実は日本は世界第2の文具消費大国でもあり、世界最高品質の製品供給国でもあります。
ところで文具・事務機業界は、今大きく変化しています。異業種や外資系小売業、特にカタログによるオフィス用品通販、インターネット受発注によるWEB店舗の参入などで、従来の流通3段階から卸中抜き現象が起きたり、卸、小売業の統廃合が地方を中心に各地で起こるなど、環境は厳しさを増しています。
そのため文具店、卸店の倒産、廃業も続いており、日本全国に最盛期3万店あった文具小売店も、平成19年6月1日調査では1万1797店に減り、現在は1万1000店前後と推測されます。その中でも売場面積の増床や品揃えの拡大を試みる文具店も多く、懸命な試行錯誤が現場では行われています。
そして今この業界の流通構造の変化が顕著となっています。小売店にとっては厳しい環境にありますが、新しいビジネス展開も期待できる市場となっています
1.文具・事務用品業界の様相
文具・事務用品業界は、ノート・紙製品、文具・事務用品、筆記具類、オフィス家具、OA・パソコン関連用品、机上事務機器、その他関連製品を扱う業界。
各種調査資料で、これを見ると、文具・事務用品市場規模は1998年以降は微減基調にあり、法人需要の低迷や製品単価の低下などの市場環境の逆風を受け、当面この状況が続くと予想される。また製品分野別の構成では、法人需要に依存していた、オフィス家具が大きく減少しているのに対して、個人需要比率も大きい。オフィス家具以外の製品分野は微減基調に止まる。
2.家計調査年報から見る文房具支出額の推移
過去10カ年での1世帯当たりの年間文房具支出額推移を見ると、1999年度までの9年では多少の増減を繰り返しながら「8,500円~9,000円」の幅に納まってきた。しかし2000年度には急激に支出額が減少し、「7,953円」と一気に8,000円の大台を割ってしまった。
この背景には「購入価格の急速な低下(大型店や100円ショップ、通販等の拡大で製品単価低下)」「購入頻度の低下(景気低迷の影響)」「若年層の減少」「パソコンの普及拡大」といった要因が複合的に影響していると思われる。法人需要が冷え込む中での個人需要の激減であり、業界には大きな危惧を抱かせる結果となった。
3.商業統計から見る文具小売業の推移
商業統計から「書籍・雑誌・紙・文房具小売業」の店舗数推移を見ると、昭和60年以降は、ほぼ3年毎に10%前後の減少を記録しており、平成9年/昭和60年対比では70%を割るレベルにまで低下している。
このように小売店舗数から見る文具・事務用品業界は、市場規模推移や家計支出額推移を遥かに上回るスピードで縮小していると言える。言い換えれば当業界の不振を強く反映した形で小売店が低迷していると言る。
4.文具・事務用品市場の動向
最近の文具・事務用品業界では、商品面での「環境・エコロジー対応の深化」が指摘できる。この流れは、1990年代の中頃から本格化してきたが、より一般化したのは1997年以降である。環境・エコロジー対応の代表的な事例としては、「再生紙利用、古紙再利用(配合率の向上)」「塩ビ系素材から非塩ビ系素材へ」「部材の分別化、分別廃棄対応」「部材・素材の再利用・リサイクル化」といった点が挙げられる。そしてこれらのコンセプトは既に一般化しており、主要メーカーの主要製品には、環境・エコロジー対応が基本コンセプトとして組み込まれている。次に価格面では、米国系のスーパーストア(オフィスデポ等)の進出やアスクルに代表される通販業態の拡大、海外輸入品増加などの影響で、末端での販売価格の低化・常態化しており、メーカー・販売店の両者で収益面の悪化が顕著となってきている。そのため、業界全体での課題として、生産性向上に向けての取組み強化が求められている。
流通面では、ポイントとして「既存販売ルートの縮小」「通販チャネルの急成長」「小売店の変化(専門店からチェーン店、大型店)」「製品価格の急激な低下と収益構造の悪化」「非文具製品の扱い拡大(OAサプライ製品)」といった点が指摘できる。さらに加えて、小売業態での構造的なテーマである「後継者難、低価格化での収益悪化、大型店舗・チェーン業態との競争、経営者の高齢化、販売チャネルの多様化」といった課題があり、ここ数年で急速に構造に変化が現れている。
5.文具・事務用品の流通チャネル
文具・事務用品の流通ルートとしては、主に以下のようである。
店頭チャネル(文具専門店、書店、量販店、ホームセンター、カメラ・家電量販店、100円ショップ、その他小売店)
納品販売(企業・事業所ユーザへ納品業者等を通じての販売)
通販・直販(アスクル等のオフィス通販事業者、メーカーからの直販)
6.文具・事務用品市場での構造変化とその要因
文具・事務用品市場自体は微減基調にあり、加えて家計調査年報で見られるような一般ユーザ(個人ユーザ)需要の低迷もあって、当該市場ではほぼ全体的に縮小傾向になっている。しかしその中で、唯一拡大しているのがアスクルに代表されるオフィス通販である。尚、オフィス通販チャネルには、「文具・事務用品」の他にも「OA・PC用品、生活用品・日用雑貨、家具・インテリア、その他オフィス用品」を含むが、全てのジャンルで高い伸長率を記録している。
最近の文具・事務用品チャネルの変動要因を見ると、オフィス通販チャネルの急速な拡大が最大のファクターとなっている(特にアスクルの急成長)。この点を中心にして、さらに小売業態の変化(文具小売店の減少、大型・チェーン店の増加、量販店、家電・OA系量販店、100円ショップ等の新業態の拡大)、中間流通事業者での再編機運(買収、合併、グループ化、廃業・撤退、倒産)、また米国系スーパーストアの本格的な進出等も変動ポイントとして指摘できる。そしてこれらの要因が複合的に絡み合って、市場構造の急激な変化が現れたと判断される。またパソコンを中心としたシステム環境の普及・浸透(パソコン及びプリンターの普及、インターネット環境の整備)も無視できない要因である。さらに、1990年代後半での景気後退及びそれに起因した事務経費削減圧力の影響も、製品単価を下げる要因として作用していると言える。
以上のような変化の中でオフィス通販ビジネスがキーポイントになっているわけだが店頭小売販売の頭打ちが明らかになってきた小売店おいては、オフィス通販の市場性に着目して、オフィス通販事業でのエージェント(代理店)にシフトするケースが増えてきている。
つまり既存の店頭顧客に対するサービスを維持・確保しながら、文具・事務用品以外のラインアップ・品揃えを持つ事で、一気に新規ユーザの獲得を図るといった展開であり、オフィス通販ビジネスは、この点を背景に文具小売店での注目を集めるビジネスモデルになっている。
7.オフィス通販市場の市場構造
各種調査資料、公的データを基に推計したオフィス通販市場の動向を見ると、当該市場は、1998年~2001年度にかけて年平均50%前後の高伸長を遂げており、特に1998年度までは、まさに倍々ゲームでの拡大であった。そして1,000億円に迫った1999年度からは伸び率は鈍化したものの、その後も依然として高伸長を示しており、2002年度では2,000億円を突破すると見られる。
8.主なオフィス通販企業
2000年度でのオフィス通販業界ランキング1位はアスクルで、6割近いシェアを持っている寡占企業。現状のオフィス通販市場では、同社一人勝ちの様相も呈しており、まさにオフィス通販市場を牽引してきた企業と言えよう。
ランキング2位にはフォーレスト、3位にオフィスデポと続く。そして4位には、文具・事務用品業界トップメーカーであるコクヨが設立したカウネットが続く。そして当該市場は、この上位4社で8割近い構成になると見られる。
9.オフィス通販ビジネスの文具・事務用品市場への影響
オフィス用品(文具・事務用品)市場では、オフィス通販の拡大によって様々なビジネス環境の変化が起きている。
まず指摘できるポイントは、価格面である。オフィス通販ビジネスは基本的に値引販売を前提としており、この価格優位性で需要開拓をしてきた事は否めない。そのため、元来値引販売を行ってきた納品業者に加え、定価販売が基本だった小売業においても値引対応が不可欠になり、業界全体として低価格化が深刻化したと言えよう。製品面では、オフィスでのコンピュータ化への迅速対応が指摘できる。特にOA機器、OAサプライ、OAアクセサリー需要の高まりに対して、いち早く対応したのがオフィス通販ビジネスであったと評価されている。
媒体面では、インターネットの普及が急速に進んだことで、より効率的・低コストなオペレーションが可能になった。現在のオフィス通販業界トップのアスクルでは、インターネット受注比率が3割前後に達しており、この事でさらにユーザでのインターネット利用の促進に拍車をかけたと言えよう。
そして今後のオフィス通販市場は、供給業者・ユーザの両サイドから本格的なインターネット受注が見られるようになり、この事でより一層オフィス用品販売が集中する可能性があると言えよう。
10.今後のオフィス通販ビジネスの形態と文具小売店との関連
今後のオフィス通販ビジネスでのビジネス形態としては、現在の法人ユーザ主流から個人ユーザーへの変化が予想される。現状では本格的な対個人へのビジネスを展開しているオフィス通販事業者はほとんどないと見られるが、一般消費者を対象とした「品揃え・カタログ販売・宣伝活動」等のマーケティング施策は既に行われており、近い将来個人消費者をターゲットとした展開が広がる可能性は高いと言えよう。
そして消費者をターゲットとした場合は、法人ユーザ向け以上にブランド力、知名度が訴求ポイントとなる事から、先発事業者、ランキング上位事業者、体力事業者(宣伝・広告対応力、キャンペーン力に優れる)が先行し、必然的に現在のオフィス通販業界での上位事業者が優位に立つ事が予想される。
いずれにしても、オフィス通販事業者が本格的に個人ユーザー向けにビジネスを転回してくれば、文具小売店を基盤とするエージェント(代理店)においても店頭顧客(個人ユーザ)を囲い込む手段が増えるわけであり、法人ユーザでの新規顧客開拓と並んで、既存ユーザ囲い込みといったメリットがでてくる。
現在、一部の文具小売店では自社独自での通販ビジネスを展開しているところも見られるが、このような展開は多くの小売業では非常にリスクも大きく、また体力的に難しいと言える。そこで比較的低リスクで対応でき、また既設事業との乖離も少ないオフィス通販でのエージェント展開を検討してみる事は、小売業での業容・ビジネスの拡大においては、決して無駄ではないと思われる。
現在、文房具店は厳しい状況下に置かれています。消費者の文房具用品離れ、文房具店離れ。多くの個人消費者はスーパー、ホームセンター、100円ショップ等でただ間に合えばいいと言う味気ない買い方をされています。当店の様な文房具店に来れば本当に楽しいのに。
法人への納入ではアスクルに負けました。今後は当店でもカウネットとのエージェント契約を考えています。最後に個人消費者の文房具店離れだけは歯止めを掛けたいと思い、何らかの展開を考えています。
(引用;情報誌「楽市楽座」(GRC発行 NO.35)平成13年度 第2号)
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